今回は Google 検索で見つけた総説を紹介する.システマティックレビューではなく,ナラティブレビューである.引用している文献はシステマティックレビューやメタアナリシス,ランダム化比較試験など良質のものもあるが総じてピンキリだ.何でもそうだが,この記事に書かれていることも盲信しないで欲しい.
長くなったので前編に食事,後編に身体の適応について述べることにしよう.
検索式
検索式は “strength training” AND “carbohydrate” AND “systematic review” AND “meta analysis” AND pmc とした.1ページ目に紹介されていた論文の一つである.発行元は国際スポーツ栄養学会で 2017 年の発刊である.
検索方法はPubMedを使わずに医学論文を探してみよう!~楽しみながら論文を検索する方法~で紹介されていた.
International society of sports nutrition position stand: diets and body composition
Position Statement: The International Society of Sports Nutrition (ISSN) bases the following position stand on a critical analysis of the literature regarding the effects of diet types (macronutrient composition; eating styles) and their influence on body composition. The ISSN has concluded the following. 1) There is a multitude of diet types and eating styles, whereby numerous subtypes fall under each major dietary archetype. 2) All body composition assessment methods have strengths and limitations. 3) Diets primarily focused on fat loss are driven by a sustained caloric deficit. The higher the baseline body fat level, the more aggressively the caloric deficit may be imposed. Slower rates of weight loss can better preserve lean mass (LM) in leaner subjects. 4) Diets focused primarily on accruing LM are driven by a sustained caloric surplus to facilitate anabolic processes and support increasing resistance-training demands. The composition and magnitude of the surplus, as well as training status of the subjects can influence the nature of the gains. 5) A wide range of dietary approaches (low-fat to low-carbohydrate/ketogenic, and all points between) can be similarly effective for improving body composition. 6) Increasing dietary protein to levels significantly beyond current recommendations for athletic populations may result in improved body composition. Higher protein intakes (2.3–3.1 g/kg FFM) may be required to maximize muscle retention in lean, resistance-trained subjects under hypocaloric conditions. Emerging research on very high protein intakes (>3 g/kg) has demonstrated that the known thermic, satiating, and LM-preserving effects of dietary protein might be amplified in resistance-training subjects. 7) The collective body of intermittent caloric restriction research demonstrates no significant advantage over daily caloric restriction for improving body composition. 8) The long-term success of a diet depends upon compliance and suppression or circumvention of mitigating factors such as adaptive thermogenesis. 9) There is a paucity of research on women and older populations, as well as a wide range of untapped permutations of feeding frequency and macronutrient distribution at various energetic balances combined with training. Behavioral and lifestyle modification strategies are still poorly researched areas of weight management.
ポジションステートメント:国際スポーツ栄養学会 (ISSN) は,食事の種類(主要栄養素の構成,食事のスタイル)の影響とそれが体組成に及ぼす影響に関する文献の批判的分析に基づいて,次のような立場に立っている.ISSN は次のように結論している.
- 多数のサブタイプがそれぞれの主要な食事の原型の下に入ることによって,食事の種類と食事のスタイルがたくさんある.
- すべての体組成評価方法には長所と短所がある.
- 主に脂肪の減少に焦点を当てた食事は,持続的なカロリー不足によって引き起こされる.ベースラインの体脂肪レベルが高いほど,カロリー不足がより積極的に課される可能性がある.体重減少の速度が遅いほど,よりスリムな被験者の除脂肪体重 (LM) をよりよく維持することができる.
- 主に除脂肪量の獲得に焦点を当てた食事は,蛋白同化作用を促進し,筋力トレーニングの要求の増加をサポートするための持続的なカロリーの過剰によって駆動される.余剰の構成と規模,および被験者の訓練状況は,利益の性質に影響を与える.
- 広範囲の食事療法(低脂肪から低炭水化物/ケトジェニック,およびその間のすべての点)が体組成を改善するために同様に有効であり得る.
- 現在の運動人口の推奨値を大幅に超えるレベルまで食事たんぱく質を増やすと体組成が改善される可能性がある.低カロリー条件下で無駄のない筋力トレーニングを受けた被験者の筋肉維持を最大にするには,より高いたんぱく質摂取量 (2.3 – 3.1 g/kg FFM) が必要な場合がある.非常に高いたんぱく質摂取量 (> 3 g/kg) に関する新たな研究により,食物たんぱく質の既知の熱的効果,満腹感,および除脂肪量の維持効果が筋力トレーニングを受けている被験者で増幅される可能性があることが示された.
- 間欠的カロリー制限研究の集積は,体組成を改善するために連日のカロリー制限を超える有意な利点を示さない.
- 食事療法の長期的な成功は,順応性および適応熱産生などの緩和要因の抑制または回避にかかっている.
- 女性と高齢者での研究は不足している.また,トレーニングと組み合わせた様々なエネルギー収支での摂餌頻度と主要栄養素分布の未開発の幅広い順列がある.行動や生活習慣の改善戦略は,いまだに研究されていない体重管理の分野である.
背景
主要なダイエットの種類があり,それには多数の亜種が散在している.このことが互いに衝突する原則の迷路を作り出し,そのために一般大衆と実務家にとってナビゲートするのを困難にしている.混乱を複雑にしているのは,根拠のない習慣に満ちた,様々なメディアで持続的に拡散するダイエットの流行である.ゆえに医療従事者,コーチ(トレーナー,栄養士,スポーツ栄養士を含む),アスリート,そして一般市民を指導する勧告を考案するためには.科学的証拠を体系的に検討することが重要である.このポジションスタンドの目的は,体組成に対する様々な食事の効果を明確にすることである.
「ダイエット」の一般的な定義は,個人が定期的に消費する食品や飲料から得られるエネルギーと栄養素の総計である.ゆえに,以下の食事の原型を評価する.つまり,超低エネルギーまたは低エネルギー食 (VLED/LED), 低脂肪食 (LFD), 低炭水化物食 (LCD), ケトジェニック食 (KD), 高たんぱく質食 (HPD) および間欠的絶食 (IF) である.定性的テーマやコマーシャルブランドの食事法は必然的に上記分類の範疇に入ることになる.ゆえに,この立場からは,「名前のついた」または「ブランドの」食事法(例えば,アトキンスダイエット,オーニッシュダイエット,ゾーンダイエット,パレオダイエットなど)ではなく,その親カテゴリで主要な精査を受けることになるだろう.
本ポジションスタンドはさらに,最低でも 4 週間の期間を有する前向き介入研究に焦点を当てる.これは,これらの変数における筋力トレーニングの効果同様, 脂肪量 (FM) と除脂肪量 (LM, これは互換的に FFM とも呼ばれる) における有意な変化に必要な最小期間と考えられるからである.エネルギー収支(例えば低カロリー,高カロリーおよび等カロリー)の範囲に渡る試験同様,トレーニングを伴うかまたは伴わない試験とプール解析が含められた.体組成を計測しない試験は含められず,疾病の治療を含めて臨床的状況における食事療法の効果の検討を行っていない試験も含められなかった.後者のトピックが本著の範囲に違反しているにもかかわらず,体組成が健康の基本的パラメーターと密接に関係していることは依然として重要である.体組成改善のためのスポーツおよびフィットネスを適用することは別としても,高い割合の除脂肪量はメタボリックシンドローム [1], 骨量減少 [2], およびサルコペニアに関連する複数の合併症 [3, 4] リスクを減少させる.
体組成評価法
体組成の評価は,本質的に複雑なプロセスを簡略化するための試みである.そのため,除脂肪量と脂肪量およびそれらのサブコンポーネントを正確に推定するための方法がいくつかある.スポーツ科学と医学領域で使用される最も一般的な方法を概説する前に,測定または推定された成分の連続体があることに注意すべきである.25 年以上前に Wang ら [5] は体組成を組織化するための 5 段階モデルを提案した [6].
- 原子レベル:水素,酸素,窒素,炭素,ナトリウム,カリウム,塩化物,リン,カルシウム,マグネシウム,硫黄.
- 分子レベル:4C モデルには, FM, 全身水分 (TBW), 全身蛋白質,および骨ミネラル含有量が含まれる. 3C モデルには, FM, TBW, および無脂肪ソリッドが含まれる.代替 3C モデルには, FM, 骨ミネラル,および残留質量が含まれる. 2C モデルは FM と FFM を含む.
- 細胞レベル:3C モデルには,細胞,細胞外液,細胞外固形物が含まれる. 4C モデルは,体細胞質量, FM, 細胞外液,および細胞外固形分を含む.
- 組織臓器レベル:脂肪組織,骨格筋,骨,内臓器官,その他の組織.
- 全身レベル:頭,体幹,および付属肢.
4 C モデルは除脂肪体重組成の個人間の変動に対して最大の感度を有する.その包括性と正確性は他のすべてのモデルと比較される「ゴールドスタンダード」としての評価を得ているが,運輸上の問題のために一次研究での時々の使用に限定されている.2 C モデルは脂肪量と除脂肪量を推定し,除脂肪量の水分,蛋白質,ミネラル含有量は定数であるとの前提で動作する.したがって 2 C モデルは成人に最も一般的に使用されるアプローチ法である.それらの比較的低コスト,非侵襲性および操作の簡便性のために 2 C モデルに基づく手法は臨床診療およびスポーツ,フィットネスの設定において一般的である.2 C モデルに基づく手法の例として hydrodensitometry (水中体重秤量法),空気置換法 (ADP または BOD POD®), 皮下脂肪厚および生体電気インピーダンス法 (BIA) がある.二重エネルギー X 線吸収測定法 (DXA) は骨ミネラル含有量,除脂肪量,脂肪量を測定する 3 C モデルに基づいているが,それでも水分,グリコーゲンおよび筋クレアチン濃度の評価間の差異から混乱をきたすことがあり,特に運動と回復の周期を有するアスリート集団において顕著である [7, 8].
体組成法はさらに直接法,間接法および基準として分類される [9]. 直接法は特定のまたは標的の相または過程を測定する.例えば TBW, 同位体希釈,中性子の励起など.間接法は直接法または基準法の代替手段を提供する.間接法の例は人体計測(例えば皮下脂肪厚など), ADP, BIA および生体インピーダンス分光法 (BIS) である.基準法は骨格筋や脂肪組織の密度や分布など,身体の特定の特性を計測する.例としては水中秤量法,コンピュータ断層法,核磁気共鳴法 (MRI) および DXA がある.マルチコンパートメントモデルは基準法,つまり他の方法が判断される基準とみなされるように発展してきたことに留意する必要がある.
様々な方法がしばしば文献的に分類されてきたが,研究室の手法(例えば DXA, ADP)または現場の手法(例えば皮下脂肪厚,超音波, BIA, BIS)のいずれかとしてそれぞれの用途に基づいて分類されており,研究または臨床設定およびそれらの携帯性に応じている.マルチコンパートメントモデルを含む研究室の手法は伝統的により正確で有効とみなされてきた.BIA と BIS は複数の周波数を含めて発展してきた.この技術は体組織の電気的特性に基づいて複数の周波数を通じて体組成をさらに正確に推定するもので,従来の単一周波数法(携帯型 BIA やスケール)とは対照的である.しかし,多周波数でのより高いレベルの高度化は可用性の低下とコストの増加をしばしば伴う.広範囲の体組成測定技術およびアスリートの測定に伴う特有の問題(運動またはグリコーゲン枯渇,水分補給,利用可能時間)などを考慮するに,この集団における体組成評価のための普遍的に優れた方法は存在しない [10, 11, 12]. Wagner と Hayward による優れたレビュー [10] は次のように結論づけている.すなわち「『最善の』単一の方法は存在しない.むしろ,臨床医または研究者は彼らの評価ニーズの実際的な考慮事項を方法の限界と比較検討しなければならない」.Table 1 に,選択された体組成評価方法の特徴を概説している.
主なダイエットの原型
低エネルギー食
低エネルギー食 (LED) と超低エネルギー食 (VLED) はそれぞれ 800 – 1200 kcal/d と 400 – 800 kcal/d の提供を特徴とする [21]. 低エネルギー食には 800 – 1800 kcal を提供するという,より自由な定義も与えられていることに留意されたい [22]. 超低エネルギー食は典型的には液体の形態であり商業的に調整される.その食事の目的は可能な限り除脂肪量を維持しつつ,急速な体重減少 (1.0 – 2.5 kg/week) を誘導することである.超低エネルギー食はすべての通常の食事摂取を置換するようにデザインされているため,1 日 1 – 2 食を置き換えることを目的とした代替食と混同すべきではない.このように,超低エネルギー食は全方向で必須の微量栄養素を強化してある.超低エネルギー食の主要栄養素は,たんぱく質,脂質,炭水化物がそれぞれ 70 – 100 g/d, 15 g/d, 30 – 80 g/d である.たんぱく質を節約するよう即効性に修飾されたものは超低エネルギー食のより高たんぱく質の変種と考えられ,およそ 1.2 – 1.5 g/kg/d のたんぱく質摂取量に相当する [23]. しかし 50 g/d もの低たんぱく質摂取量においても,超低エネルギー食による除脂肪量減少の割合は全体重減少の 25 %, 脂肪量減少の割合は 75 % と報告されている [24].
筋力トレーニングは少なくとも未経験および肥満の被検者においては筋肉の保存を増強し,超低エネルギー食の期間中に筋肉を増加させさえする可能性があることは印象的である.Bryner [25] らによる 12 週間の試験では, 800 kcal を消費する間,筋力トレーニングは未経験の肥満の被検者において除脂肪量を維持することが判明した.実際にはわずかに増加していたが,統計的有意差には至らなかった.安静時代謝率 (RMR) はトレーニング群で有意に増加したが,対照群では減少した.Donnely らは,トレーニング経験のない肥満の被検者が 800 kcal の食事と筋力トレーニングを受けて 12 週間後に遅筋線維と速筋線維の両者の断面積が有意に増加したと報告している [26]. これらの結果を痩せてトレーニングを受けた被検者に必ずしも外挿することはできないが,それでもなお,興味深い.
初期の体重減少が大きいほど長期的な体重減少の維持における成功率が高いため,肥満の集団では積極的なカロリー制限は強力な介入となる可能性がある [27]. しかしながら Thai と Wadden によるメタアナリシスによると超低エネルギー食は低エネルギー食に比較して 1 年以上の長期間の体重減少をもたらさないことが明らかになった [22]. それほど厳しくないカロリー制限に移行するまでの 8 – 12 週間の超低エネルギー食は臨床診療では一般的である.ただし,超低エネルギー食を安全に持続することができる期間に関しては,議論が進行中である.低品質のたんぱく質の摂取,除脂肪体重の極端な喪失および不適切な医学的管理による多数の死亡例が報告されている [28]. 超低エネルギー食の副作用として,寒冷不耐性,疲労,頭痛,めまい,筋肉の痙攣,便秘などがある.脱毛は超低エネルギー食の拡大使用による最も一般的な訴えであると報告されている [22]. 超低エネルギー食の使用は,健康なアスリート集団との関連性が限定されていることに留意すべきである.
低脂肪食
低脂肪食 (LFD) は 20 – 35 % の脂肪を提供するものと定義されている [29]. これは医学研究所の食品栄養委員会により設定された成人の主要栄養素許容分布範囲 (AMDR) に基づく [30]. AMDR ではたんぱく質は総エネルギーの 10 – 35 %, 炭水化物は 45 – 65 %, 脂質は 20 – 35 % に設定されている.低脂肪食の分類は AMDR に基づいているが,低脂肪食と言うよりも高炭水化物食と呼ぶほうがより正確かもしれない.というのも,主要栄養素の範囲内でこれが優勢だからである.そのため,低脂肪食の定義は本質的に主観的なものである.
科学者や医師は 1950 年代から脂質摂取量の減量を進めてきた [31]. 1977 年の米国の食事療法目標の発刊および 1980 年の米国人のための食事療法ガイドライン (DGA) の発刊は,公衆衛生の改善を目的として総脂質摂取量の減量を強化するものであった [32]. AMDR は 2005 年に発刊されたが,その持続力は明らかである.というのは,最近更新された DGA がアメリカ心臓協会,アメリカ糖尿病協会およびアメリカ栄養および栄養学アカデミー同様,その範囲を遵守しているためである [33].
Hooper らによる最近の系統的レビュー [34] では 32 の無作為化比較試験を分析しており, 54,000 名までの被検者と最低でも 6 ヶ月間の期間を有する.通常の摂取量と比較して控えめに食事性脂質の割合を減らしたところ,継続して体重,体脂肪および腹囲を減少させた.対照群,介入群とも体重を減少させる意図を有する群を有する試験は除外した.これらの知見の意味するところは,食事性脂質の割合を減らすことは事実上,総エネルギー摂取量を減らすことになり,その結果,時間経過と共に体脂肪を減らすことになる,ということである.
減量のために食事性脂質を減量することの前提は,最もエネルギー密度の高い主要栄養素を標的として低カロリー状態を課すことである.厳密に制御された実験は外観と味を類似させて密かに食事の脂質含有量を操作しており,より高エネルギー密度の高脂質食はより大きな体重増加または体重減少を引き起こす結果となった [35, 36]. しかし長期間になると,より低エネルギー密度の食事はエネルギー制限単独と比較して一貫してより大きな体重減少をもたらすことはなかった [37, 38]. エネルギー密度削減の短期効果と長期効果との間の乖離の理由として,学習による代償が含まれていると推測されている.さらに,食後因子が感覚特異的な満腹感を増加させる可能性があり,これは時間経過と共に,エネルギー密度の高い食品に対する初期の嗜好を低下させる可能性がある [39].
超低脂質食 (VLFD) は 10 – 20 % の脂質を提供するものと定義されている [29]. この特性に合致する食事には限定された試験しかない.超低脂質食における制御介入データの本体は主に脂質摂取を積極的に最小限に抑制するベジタリアンおよびヴィーガンの食事の健康への影響を調査した試験からなる.これらの食事は体重減少に対して一貫した陽性の効果を示している [40] が,この文献では体組成データを計測していない.施行された試験の中で Gardner らによる A TO Z Weight Loss Study [41] ではアトキンス,ゾーン,LEARN およびオーニッシュの食事療法間に有意な群間差を示さなかった.しかし,オーニッシュ群が総カロリーの 10 % 以下の脂質摂取を割り当てたにもかかわらず,実際の摂取量は 12 ヶ月の試験の終わりには 21.1 % から 29.8 % に上昇していた.同様の結果が de Souza の POUNDS LOST 試験でも見られた [42]. 高脂肪食群 (40 %) と低脂肪食群 (20 %) をそれぞれ高たんぱく質食群 (25 %) および平均たんぱく質食群 (15 %) にそれぞれ割り当て, 4 群に割り当てた.6 ヶ月語および 2 年後のいずれにおいても,腹部総脂肪減少,皮下脂肪減少また内臓脂肪の減少に有意な群間差は認められなかった. 両群とも 6 ヶ月時点で平均で 2.1 kg および 4.2 kg の除脂肪量の減少が認められた.高たんぱく質食群での除脂肪量維持の利点は全く認められなかったが,これは両群のたんぱく質摂取量レベルが最適以下 (1.1 g/kg および 0.7 g/kg) であったことが原因と考えられている.過去の低脂肪食の試験で見られたように,実際の摂取量が 26 – 28 % の範囲にあったため,脂肪 20 % を目標とする制限を達成するのは明らかに困難であった.
低炭水化物食
低脂肪食同様,低炭水化物食 (LCD) は客観的な定義のない広いカテゴリーである.低炭水化物食を定量的に特徴づける世界的な合意は存在しない.AMDR は成人の適切な炭水化物として全エネルギーの 45 – 65 % を挙げている [33]. したがって,摂取量が 45 % を下回る食事は「公式の」ガイドラインに満たず,低炭水化物食とみなすことができる.しかしながら,他で公表された低炭水化物食の定義は AMDR で設定された定義を無視している.低炭水化物食とは炭水化物からのエネルギーが総エネルギーの 40 % を上限とする,と定義されている [43, 44]. 比率ではなく絶対量で言えば,低炭水化物食とは炭水化物の量が 200 g 未満であると定義されている [43]. この自由な定義に異論を唱えている研究者もおり,ケトジェニック食でない低炭水化物食は 50 – 150 g, ケトジェニック食は最大で 50 g を含むものとして言及している [45].
低脂肪食と低炭水化物食の効果を比較したメタアナリシスでは,広範囲の変数にわたって混在した結果が得られた.低炭水化物食の自由な操作上の定義 (e.g. ≤ 45 %) は体重と腹囲の有意差の欠如をもたらしたが [46], 炭水化物の閾値の低い分類 (< 20 %) では低炭水化物食で体重減少や他の心血管リスク減少を認めた [47]. 最近 Hashimoto らは体脂肪量 (FM) と体重に対する低炭水化物食の効果について初めてのメタアナリシスを行った [48]. この解析は過体重または肥満の被検者の参加した試験に限定され,総数 1,416 名の被検者を有し,食事を「緩徐な低炭水化物食」(40 % までの炭水化物)または「厳格な低炭水化物食」(50 g までの炭水化物または総エネルギーの 10 % までの炭水化物)に層別化した.8 件の無作為化比較試験が厳格な低炭水化物食の介入群を含み,7 件の無作為化比較試験が緩徐な低炭水化物食の介入群を含んでいた.検討したすべての群で対照群より低炭水化物食群において体脂肪量の減少は有意に大きかった.しかしながら,サブ解析の示すところによると,厳格な低炭水化物食群と対照群との間では脂肪量が減少したが,緩徐な低炭水化物食と対照群との間では体脂肪減少の差は有意ではなかった.短期間と長期間との間での効果の別のサブ解析では,どちらの低炭水化物食群でも 12 ヶ月未満または 12 ヶ月以上の試験で,対照群よりも有意に高い脂肪量減少を認めた.さらにサブ解析を行ったところ次の点が判明した.つまり,生体インピーダンス法では脂肪量減少の有意な群間差を検出できなかったが,二重エネルギー X 線吸収測定法は対照群と比較して低炭水化物食群において有意に大きな減少を示したのである.次の点を強調する必要がある.つまり,統計的有意差に達しているにもかかわらず,低炭水化物食群と対照群との間の脂肪量減少の平均残差は小さかった (range = 0.57 – 1.46 kg). 被検者の肥満特性を考慮すると,臨床的な関連性は疑わしい.著者ら次のように推測している.つまり,対照群と比較した低炭水化物食群の利点は,より高いたんぱく質摂取量に由来するのかもしれないと.
ケトジェニック食
低炭水化物食の亜型であるにもかかわらず,ケトジェニック食 (KD) は別の議論に値する.非ケトジェニック食が主観的に定義されているのに対して,ケトジェニック食は循環血中ケトン体を上昇させる能力により客観的に定義されており,その状態をケトーシス,あるいは生理的または栄養的ケトーシスと呼ぶ.完全な絶食は置くとして,この状態は炭水化物を最大で 50 g まで,または総エネルギーの 10 % までに制限して達成される [45] ものであり,たんぱく質を中等度 (1.2 – 1.5 g/kg/d) に維持 [49] し,脂質からのエネルギー摂取量を優先(~ 60 – 80 %, たんぱく質と炭水化物の置換度に依存)するものである.ケトーシスとは比較的良性の状態であり,ケトアシドーシスと混同すべきではない.ケトアシドーシスは 1 型糖尿病で見られる病的状態であり,インスリン分泌欠損で発生するケトン体の危険な過剰産生である.肝臓で産生される最初のケトン体はアセト酢酸であり,最初の循環血中ケトン体は βヒドロキシ酪酸である [50]. 定常状態で食事制限のない状態下では循環血中ケトン体濃度は低い (< 3 mmol/L). 炭水化物の制限の程度や総エネルギーに応じて,ケトン体は循環血中ケトン体濃度を 0.5 – 3 mmol/L の範囲で上昇させることが可能であり,生理的ケトン体濃度は最大で 7 – 8 mmol/L に達する [49].
単なる総エネルギー減量を超えた炭水化物減量による脂肪減少の利点を提案すると,主として脂肪分解のインスリン介在性の阻害および,おそらくは脂質酸化の亢進に基づいている.しかしながら,Hall らによる単群試験では 4 週間の低脂肪食(炭水化物 300 g)に引き続いて 4 週間のケトジェニック食(炭水化物 31 g)の効果を調査した.ケトジェニック食期間の 2 週間以内に血中ケトン体濃度は 1.5 mmol/L で頭打ちになった.ケトジェニック食への切り替えに際しては 1 週間以上持続する一時的なエネルギー消費量の増加 (~ 100 kcal/d) が見られた.これは窒素の損失の一時的な増加を伴っており,糖新生の増加を含むストレス反応を潜在的に示唆するものである.インスリン濃度は(80 % の脂質および 5 % の炭水化物からなる)ケトジェニック食の期間で急速かつ実質的に低下したにもかかわらず,ケトジェニック食期の前半で実質的な体脂肪減少の鈍化を認めた.
ケトン体の産生と利用は特異的な代謝状態であると知られていると仮定されているが,これは理論上は,脂肪減少という目的には非ケトジェニック状態よりも優れているはずであるというものである [45]. しかしながら,この主張は主に,低炭水化物食またはケトジェニック食群における,より高いたんぱく質摂取量を含めた研究に基づいている.たんぱく質では小さな違いですら,より高い摂取量の方が大きな利益をもたらす.Clifton らによるメタアナリシスでは, 5 % のたんぱく質摂取量の違いが 12 ヶ月後の脂肪量減少の効果量に 3 倍の違いをもたらすと明らかになった [52]. Soenen らが系統的に証明したのだが,低炭水化物食においては,たんぱく質摂取量が高いほど,低カロリー状態での体重減少をより促進する重要な因子となる [53]. たんぱく質が最も満腹感の高い主要栄養素であることを考慮すれば,これはさほど驚くべきことではない [54]. たんぱく質の満腹効果の最初の例は Weigle らによる研究 [55] であり,自由な条件下でたんぱく質摂取量を総エネルギーの 15 % から 30 % に増やすと,エネルギー摂取量が自然に 441 kcal/d 減少することが明らかになっている.この結果 12 週間で 4.9 kg の体重減少をもたらした.
わずかな例外 [56] を除けば,これまでケトジェニック食と非ケトジェニック食との間でたんぱく質とエネルギー摂取量を一致させた介入試験の全てにおいて,ケトジェニック食による脂肪量減少の優位性を示すことに失敗している [51, 53, 57, 58, 59, 60]. Hall らによる最近のレビュー [61] の報告によると,「入院患者の摂食管理試験(同量のたんぱく質を含有する等カロリー食)において,低炭水化物食を提供してエネルギー消費量が有意に増加したとか,体脂肪がより大幅に減少したなどと報告したものは全く存在しない」.このことと過去に議論した研究に照らすと,低炭水化物食とケトジェニック食の「特殊効果」とは彼らの主張する代謝上の優位性によるものではなく,より高いたんぱく質摂取量によるものである.おそらく,炭水化物制限の代謝上の優位性に対抗する申し立ての最も強い根拠は Hall と Guo による最近のメタアナリシスである [60]. そこには等カロリーで蛋白質を一致させた食事介入試験のみが含まれており,全ての食事摂取は被検者に提供されたものであり,自己選択式や自己申告式ではない.解析には総計 32 の研究が含められた.炭水化物は総エネルギーの 1 – 83 % の範囲であり,脂肪は 4 – 83 % の範囲であった.低炭水化物状態では,熱的優位性や脂肪減少の優位性は認められなかった.実際には,逆のことが明らかになった.エネルギー消費量 (EE) と脂肪減少が共に,高炭水化物・低脂肪状態においてわずかに大きかったのである (EE 26 kcal/d, 脂肪減少 16 g/d). しかしながら,著者らはこれらの違いは小さすぎて臨床的な意義があるとは考えられないと認めている.
既存の文献に対する一般的な批判は次のようなものである.つまり,「ケトン適応」を可能にするために試験期間を長く取る必要があるというものである(数週間ではなく数ヶ月単位).ケトン適応とは脂質酸化の増加とグリコーゲン利用減少に対応する生理的シフトである [62]. この主張に関する問題は,脂質酸化の上昇は,呼吸商の減少という形で客観的に測定できるのだが,ケトジェニック食の最初の一週間で頭打ちになるという点である [51]. 高脂肪食へのよく確立された反応は,運動中の遊離脂肪酸,血中トリアシルグリセロールおよび筋肉内のトリアシルグリセロールの酸化の増加である [63]. しかしながら,この脂質酸化の増加は,正味の脂肪量減少率の増加としばしば誤解される.この仮定は,脂質摂取量の増加および付随する脂肪貯蔵量の増加を無視している.脂肪適応の結果として,増加した筋肉内のトリアシルグリセロール濃度の上昇が示唆するのは,運動の休止期間における脂肪分解を上回る脂肪合成の増加である [64]. 繰り返しになるが,厳密に管理された等カロリーでたんぱく質を一致させた研究で一貫して証明されているのだが,ケトン適応は必ずしも脂肪バランスの純減にはならない.それが最終的に重要なことである.
脂肪減少において仮に非ケトジェニック食よりもケトジェニック食に何か優位性があるとすれば,それは食欲調節の分野である可能性がある.カロリー制限のない状態では一貫してケトジェニック食は体脂肪およびまたは体重減少の結果を出している [65, 66, 67, 68, 69]. これは自発的なエネルギー摂取量の減少により起こり,グレリン産生抑制による満腹感の増加によると考えられている [70]. さらにケトジェニック食はたんぱく質摂取量とは無関係に空腹感の抑制効果を示した.4 週間のクロスオーバー試験で Johnstone らが示したところによると,自由摂取下(意図的なカロリー制限なし)でのケトジェニック食は,エネルギー摂取量を 294 kcal/d 減少させる結果となった [66]. 後半ではケトジェニック食(炭水化物 4 %)と非ケトジェニック食(炭水化物 35 %)との間で比較的高たんぱく質摂取量(30 % エネルギー)で一致させたにもかかわらずこのような結果が認められた.この考えをさらに支持するように,Gibson らのメタアナリシスではケトジェニック食が超低エネルギー食よりも食欲を抑制することを明らかにしている [71]. しかしながら,食欲抑制がケトーシスによるものか,他の例えばたんぱく質や脂質摂取量の増加によるのか,あるいは炭水化物の制限によるのかは依然として不明である.
関心の高まっている分野は,運動能力に対するケトジェニック食の影響である.トレーニング能力は体組成に影響する可能性があるため,運動能力に対するケトジェニック食の影響は議論に値する.高脂肪食と組み合わせて炭水化物を制限するのは脂肪に適応するため(ケトン適応とも言う)だが,パフォーマンスを改善する試みであり,身体の燃料として脂質への依存度を高め,ゆえにグリコーゲン利用を節約または減少させる.これは明らかに運動能力を向上させうるものである.しかしながら,パフォーマンスにおける脂肪適応への提案された利点とは対照的に,Havemann らが明らかにしたところは,7 日間の高脂肪食 (68 %) とそれに続く 1 日の高炭水化物食 (90 %) が予測どおり脂質酸化を増加させたが,よくトレーニングされたサイクリストでは 1 km のスプリントパワーは減少した [72]. Stellingwerff らはグリコーゲン分解および酵素活性の基質利用を比較するもので,5 日間の高脂肪食 (67 %) または高炭水化物食 (70 %) に引き続いてトレーニングのない 1 日の高炭水化物食,さらに引き続いて 7 日間の介入試験を行った [73]. 高脂肪食は脂質酸化を増加させたが,ピルビン酸脱水素酵素活性を低下させ,グリコーゲン分解も低下した.これらの結果により,高脂肪・低炭水化物食の結果としての高強度の仕事量の減損の機序を説明できる [62, 65, 67]. 最近では,ケトン適応による人間工学的効果が低強度においても観察されている.Burke らの報告によると,ケトジェニック食でわずかなエネルギー不足の 3 週間後に上級の徒競走選手は脂質酸化と好気性能力の増加を示したという [74]. しかしながら,これには運動経済性の低下を伴い,与えられた速度に対する酸素需要が増加した.その線形および非線形の高炭水化物食は両者を比較して有意なパフォーマンスの改善を引き起こしたが,一方でケトジェニック食では有意な改善を認めず,有意でないがパフォーマンス低下をもたらした.Paoli らが明らかにしたことは注目に値する.ケトジェニック食の 30 日間,上級の体操選手の体重に基づく強度パフォーマンス低下は全く認められなかった [75]. さらに,ケトジェニック食は脂肪量の有意な減少 (1.9 kg) および除脂肪量の有意でない増加 (0.3 kg) をもたらした.しかしながら,群間のたんぱく質を一致 (~ 2.2 g/kg) させていた Burke らの研究とは異なり,Paoli らのたんぱく質摂取量はケトジェニック食を支持して歪んでいた (2.9 g/kg vs 1.2 g/kg). Wilson らが最近報告したのだが,ケトジェニック食と西洋食モデルとの間でたんぱく質とカロリーを一致させた比較において,強度とパワーが同様に増加しており,これはケトジェニック食では持久性トレーニングの人間工学的可能性よりも,筋力トレーニングの可能性が低いことを示唆している [56].
高たんぱく質食
高たんぱく質食 (HPD) の共通項は,それらが多様な主観的定義を有していることである.高たんぱく質食のより一般的な定義としては,総エネルギーの 25 % に達する [76] かそれを超えるもの [29] というものがある.高たんぱく質食はまた 1.2 – 1.6 g/kg の範囲とも定義されている [54]. Lemon らによる古典的な仕事が示すところとして,RDA の 2 倍のたんぱく質 (1.6 g/kg) を消費すると,除脂肪量の維持と脂肪量の減少に関して RDA (0.8 g/kg) よりも優れていることが繰り返し示されている [77, 78]. しかしながら,Pasiakos らによると,RDA の 3 倍 (2.4 g/kg) は RDA の 2 倍より有意に大きな範囲で除脂肪量を維持できなかったことが明らかになった [79]. もっと最近では,Longland らによると,高強度インターバルスプリントと筋力トレーニングを含む食事条件において,たんぱく質摂取量 2.4 g/kg では除脂肪量の増加 (1.2 kg) と脂肪量減少 (4.8 kg) を起こしたが,一方で 1.2 g/kg では除脂肪量の維持 (0.1 kg) にとどまり,脂肪量減少 (3.5 kg) も少なかった [80]. Longland らのデザインにおけるユニークな方法論的な強みは,体組成を評価するために 4 C モデルを採用したことである.被検者は全ての飲食物も提供され,追加の制御層が付加されて所見が強化されることとなった.この文献を補完するのが Arciero らの「プロテインペーシング」(1 日に 4 – 6 回の食事,1 食あたり 30 % 以上のたんぱく質,結果として 1.4 g/kg/d を超える)に関する研究であり,これは低カロリー条件下で体組成を改善するための低たんぱく質・低頻度の食事という伝統的な方法に対して優位性を示したものである [81, 82].
主要栄養素のうち,たんぱく質は最も高い熱効果を有しており,代謝的に最も高価である.これを考慮すると,ダイエット中に安静時エネルギー消費量を維持するためにより高いたんぱく質摂取量が見られたのは驚くべきことではない [54]. また,たんぱく質は最も満腹感の高い主要栄養素であり,次いで炭水化物であり脂質が最も少ない [83]. 唯一の例外 [84] を除いて,最近の一連のメタアナリシス [52, 85, 86, 87] の支持するところによると,より高いたんぱく質摂取量が体重,脂肪量および腹囲を減少させ,エネルギー不足下で除脂肪量を維持する利点があるという.Helms らによるシステマティックレビューの示唆するところによると,低カロリー状態の痩せた筋力トレーニング選手にはたんぱく質摂取量が除脂肪体重で 2.3 – 3.1 g/kg が適切であるという [88]. これは総体重ではなく除脂肪量に基づいてたんぱく質の必要量を報告した貴重な文献の一つである.
Antonio らは最近一連の調査を開始したのだが,それは超高たんぱく質食とみなすことができる [89, 90, 91, 92]. シリーズの最初,筋力トレーニングを受けた被検者に 4.4 g/kg もの食事たんぱく質を追加したのだが,対照群の維持摂取量 1.8 g/kg と比較しても体組成に有意な変化は認められなかった.驚いたことに,追加のたんぱく質は約 800 kcal/d に増加したにもかかわらず,体重増加は認められなかった.その後の 8 週間の調査には筋力トレーニングを受けた被検者が含められ,正式にピリオダイゼーションプロトコルが処方された [90]. 高たんぱく質群 (HP) は 3.4 g/kg を消費し,正常たんぱく質群 (NP) は 2.3 g/kg を消費した.両群とも有意な除脂肪量の増加 (1.5 kg) を認めた.高たんぱく質群では正常たんぱく質群と比較して有意に大きい脂肪量の減少が生じた (1.6 kg vs 0.3 kg). 高たんぱく質群がベースラインと比較してカロリー摂取量の有意な増加 (374 kcal) を報告したのに対して,正常たんぱく質群のカロリー増加は統計的有意でなかった (103 kcal) ため,これは興味深い.筋力トレーニングを受けた被検者を対象としたその後の 8 週間のクロスオーバー試験ではたんぱく質摂取量を 3.3 g/kg 対 2.6 g/kg として比較している [91]. 高たんぱく質群では正常たんぱく質群より有意にカロリー摂取量が高かった(ベースラインよりそれぞれ 450 kcal 対 81 kcal)にもかかわらず,体組成と筋力パフォーマンスに有意差は認められなかった.Antonio らは最新の調査で,筋力トレーニングを受けた被検者のクロスオーバー試験を 1 年間に延長してたんぱく質摂取量を 3.3 g/kg 対 2.5 g/kg で比較している [92]. 以前の知見と一致して,高たんぱく質群対正常たんぱく質群では体組成に有意差は認められず,特に脂肪量の有意な増加はなかったのだが,それにもかかわらずカロリー摂取量には有意差が見られていた(ベースラインよりそれぞれ 450 kcal 対 81 kcal の増加).この研究はまた,長期間の高たんぱく質摂取(RDA の 3 – 4 倍)に関する健康上の疑念に対処するために,臨床マーカーの包括的な測定リストを作成して副作用がないことを証明しており,それには完全な代謝パネルと血清脂質組成が含まれている.
Bray らによる代謝病棟入院患者の研究では 8 週間にわたって高カロリー状態を作り出し,たんぱく質を総エネルギーの 5 % (LP), 15 % (NP), 25 % (HP) に分けて比較した [76]. 三つの群全てにおいて総体重が増加したが,低たんぱく質群は除脂肪量を 0.7 kg 喪失した.さらに,正常たんぱく質群と高たんぱく質群は除脂肪量がそれぞれ 2.87 kg, 3.98 kg 増加した.三つの群全てで体脂肪が増加 (3.51 kg) し,群間の有意差は認められなかった.これらの結果は一見すると,Antonio らの観察と矛盾している [89, 90, 91, 92]. しかしながら,代謝病棟の状態に固有の厳密な管理と監視を除けば,Bray らの被検者はトレーニングを受けておらず,研究期間を通じて坐位がちであった.Antonio らの被検者はよくトレーニングされており,集中的な筋力トレーニングを受けていて,除脂肪体重を目標として燃料の酸化と優先的な栄養分配を受けていることを考慮すれば,優位性があったのかも知れない.
Antonio らの研究 [89, 90, 91, 92] で過剰に消費されたたんぱく質の運命を推測すると,食事の高体温効果,非運動性熱産生 (NEAT) の増加,運動熱産生 (TEE) 増加,エネルギー排出量の増加,満腹感の増加による他の主要栄養素摂取の減少および肝臓での脂質産生の減少を含む.エネルギー摂取量の報告に誤りがあった可能性にも同様に注意すべきである.Antonio らの調査結果がまとめて示唆するところでは,食事たんぱく質による既知の熱的効果,満腹効果および除脂肪量維持効果は,トレーニング経験のある被検者が進行性の筋力トレーニングを経験することで増幅された可能性がある.
間欠的絶食
間欠的絶食 (IF) は三つのサブクラスに分けられる.隔日絶食法 (ADF), 終日絶食法 (WDF) および時間制限食事法 (TRF) である [93]. 最も広く研究されている間欠的絶食の変法は隔日絶食法であり,これは典型的には 24 時間の絶食時間と 24 時間の摂食時間を交互に含むものである.(空腹時の赤字を相殺するための)摂食日での完全代償摂取は発生せず,したがって隔日絶食法では総体重減少と脂肪減少が発生する.除脂肪量の維持は隔日絶食法の驚くべき効果である [94, 95, 96, 97]. しかしながら,隔日絶食法状態下での除脂肪量減少が他の研究者により観察されている [98, 99, 100]. 後者の影響はより深刻なエネルギー不足に起因する可能性がある.より除脂肪量に優しいのは,エネルギー制限時間(維持需要の 25 % までで典型的には昼食時に 1 回のみの形態)と 24 時間の(食欲に応じた)自由摂取時間とを交互に変更するものである.最近,Catenacci らの報告によると,絶食日のカロリー摂取をゼロとして自由摂食日と交互にした隔日絶食法では,連日カロリー制限を行ったのと同様の体組成を示し,非監視下の減量維持の 6 ヶ月後における 1 日のカロリー制限をわずかに上回った [97]. 同じ長さの期間の絶食期間と摂食期間を交代することに注意すると,隔週のエネルギー制限(1 週間に 1 回の 1,300 kcal/d までの食事と,1 週間通常の食事との)にはこれまで 1 件の研究しか存在せず,しかしそれには言及する価値がある.というのは,その試験では体重と腹囲を減らすのにエネルギー制限と同等の効果を 8 週間で達成し,その効果を 1 年間持続させたからである [101].
終日絶食法は,エネルギー欠乏を達成するために他の維持摂食期間の週を通じて 1 – 2 回の 24 時間の絶食期間を有している.注目すべきことだが,すべての終日絶食法が「絶食」日の期間中にエネルギー摂取ゼロと言っているわけではない.終日絶食法は減量に対して一貫して効果的ではあるものの,週ごとのエネルギー不足が 6 ヶ月間にわたって均等化された時には, Harvie らは体重や体脂肪減少に関しては終日絶食群(二日間の絶食日に 647 kcal まで)と対照群との間に全く差を見出していない [102]. Harvie らによるその後の研究では,1 日のエネルギー制限 (DER) を別々の二群の終日絶食法に分けて比較した [103]. 一方は週に 2 日間のエネルギーを制限した「絶食」日から構成され,もう一方は自由にたんぱく質と不飽和脂肪酸を摂取して良い 2 日間の「絶食」日から構成される.終日絶食法は両群とも 3 ヶ月間で 1 日のエネルギー制限よりも体重減少は大きかった (3.7 kg vs 2.0 kg). ここで重要な詳細は,3 ヶ月経過した時点で,終日絶食群の中で 70 % が絶食日を完遂した一方で,1 日エネルギー制限群では目標のカロリー欠損を達成したのは 39 % に過ぎなかったということである.
時間制限食事法は通常, 16 – 20 時間の絶食時間と 4 – 8 時間の摂食時間を毎日有している.最も広く研究されている時間制限食事法の形式はラマダン絶食法であり,それは日の出から日没までの完全な絶食(食物と飲物の両方)が一ヶ月間続けられる.当然のごとく著明な体重減少が起こり,そこには除脂肪量と脂肪量の減少が含まれる [104, 105]. ラマダンの絶食研究を別にして,最近までは時間制限食事法専門の研究は不足していた.8 週間の試験が Tinsley らにより行われ,20 時間の絶食と 4 時間の摂食 (20/4) プロトコルを週に 4 日間,レクレーションでは活動的だがトレーニング経験のない被検者に対して行われた [106]. 4 時間の食事時間帯に消費される食物の量と種類に制限はなかった.標準化された筋力トレーニングプログラムを週に 3 日実施した.時間制限食事法群は有意に低いエネルギー摂取量により体重が減少した(絶食時には非絶食日と比較して 667 kcal 少ない).上腕二頭筋および大腿四頭筋の断面積は,時間制限食事群および通常食群 (ND) の両者ともに同様に増加した.群間の(DXA による)体組成の有意な変化は認められなかった.統計的有意差は認めなかったものの,除脂肪軟部組織において顕著な効果量の差異が認められた(対照群では 2.3 kg の増加,時間制限食事群では 0.2 kg 減少).両群ともに強度の増加には群間の有意差を認めなかったものの,時間制限食事群で効果量が大きかったのはベンチプレス持久性,ヒップスレッド持久性およびヒップスレッドの最大強度であった.この知見は慎重に検討されるべきである.というのは,トレーニング経験のない被検者にとって,より大きくさらに多様な神経学的適応の可能性を考慮しなくてはならないからである.
その後 Moro らによる研究で明らかになったことだが,標準化された筋力トレーニングプロトコルで筋力トレーニングを受けた被検者においては,16 時間の絶食と 8 時間の摂食サイクル (16/8) は通常の食事群 (ND) と比較して有意に大きな脂肪量の減少 (1.62 kg vs 0.31 kg) を認める結果となり,いずれも除脂肪量に有意な変化は認めなかったという [107]. 時間制限食事群の食事は午後 1 時,午後 4 時および午後 8 時に消費された.対照群の食事は午前 8 時,午後 1 時および午後 8 時に消費された.先述の Tinsley ら [106] とは異なり,時間制限食事群と対照群との間で主要栄養素は一致させていた.Tinsley らの研究ではたんぱく質摂取量は全く異なり,最適値以下となってしまっていた(時間制限食事群で 1.0 g/kg, 対照群で 1.4 g/kg).本研究の時間制限食事群および対照群の被検者はそれぞれ 1.93 g/kg, 1.89 g/kg を摂取した.これらの結果の根底にある機序は明らかになっていない.著者らの推測では,時間制限食事群におけるアディポネクチン濃度の上昇が PPAR-γ との相互作用を介してミトコンドリアでの生合成を刺激し,さらにアディポネクチン作用が主にエネルギー消費を増加させた可能性があるという.しかしながら,時間制限食事群はまたテストステロンやトリヨードサイロニン濃度の低下など,好ましくない変化ももたらした.
Seimon らが最近発表したのだが,最新の間欠的絶食法に関する最大規模のシステマティックレビューで間欠的エネルギー制限 (IER) と持続的エネルギー制限 (CER) を比較し,体重,体組成および他の臨床パラメーターの効果を見た [108]. それらのレビューは 40 件の研究を含み,うち 12 件では間欠的エネルギー制限と持続的エネルギー制限とを直接比較していた.彼らの見出したところによると,全体として,二種類の食事法は体重減少と体組成変化において「明らかに同等のアウトカム」をもたらす結果となった.興味深いことに,間欠的エネルギー制限は空腹感の抑制に優れていることが判明した.著者らの推測によると,これは飢餓時のケトン体生成に起因する可能性があるとのことである.しかしながら,全体として,間欠的絶食法は持続的エネルギー制限と比較して,体組成の優れた改善や大きな体重減少をもたらさなかったため,この効果は重要ではなかった.Table 2 に主な食事の原型の概要を示す.
“食事と体組成に関する国際スポーツ栄養学会のポジションスタンド(前編)” への3件の返信