来年の年賀状をネットプリントで印刷し,納品されてきたのでそのチップスを共有したい.
そもそも年賀状の売上は減少傾向にあり,将来は不要となると見込んでいるのだが,妻の親類や友人関係には送らざるを得ず,やむなく毎年作成している.
数年前までは裏面の写真印刷をカメラのキタムラに依頼し,日本郵便のはがきデザインキットというソフトを使って自宅のモノクロインクジェットプリンタで宛名のみ印刷していた.しかし,ここ数年で様相は様変わりした.ネットプリントによるデータ入稿が自然になり,その流れとして宛名印刷も含めて両面印刷した年賀はがきを納品するというフローが一般的になっている.
ネットプリントを提供しているサービス
正直,把握しきれていない.各自, Google 検索で調べてみてほしい.料金,納期,デザインの自由度,テンプレートの充実度など,考慮すべき要素はいくつもある.当然ながら 12 月に入ると注文が殺到し始めるため,各社とも 11 月中の料金は安めに設定してある.俺はしまうまプリントでオーダーした.ちなみに 11 月 9 日にオーダーして納品されたのは 11 月 13 日だった.
料金
はがき代は別にして,印刷代は写真品質でも 1 枚 29 円だ.オプションの宛名印刷は無料.住所録の csv ファイルを一旦アップロードすれば,翌年も使い回せる.十分にペイする金額だと思う.
既成のテンプレートではレイアウトの自由度が低い
個人的には 1 枚の写真を全面印刷したものが好みだ.縦レイアウトなら上端に『謹賀新年』,その直下に『平成31年元旦』.下端に住所,家族の氏名.横レイアウトなら右端に『謹賀新年』,その左に『平成31年元旦』.左端に住所,家族の氏名.簡素なレイアウトが一番強いインパクトを与えると思っている.
だが,既成のテンプレートでは俺の好みのレイアウトが少ない.あっても写真の縁に余計な線がついたりする.どうせなら全面印刷がいい.そこで今回は完全にレイアウトを自分で行うことにした.
PhotoShop Elementsの導入
画像処理にはペイントソフトが不可欠だ.写真,テキストはそれぞれレイヤーごとに操作できること,画像処理のためのツールとしてノウハウが入手しやすいものとなると, Adobe PhotoShop 以外にない.来年以降も使うことになるし,思い切ってライセンスを購入することにした.
職業として本格的に使用するなら上記の 12 ヶ月ライセンスを購入することになるが,俺にはそこまでは必要ない.個人用なら下記の PhotoShop Elements で十分だ.
実は CS2 ならオンラインで無料ダウンロードできるのだが,これは CS2 のライセンスを持っている人限定,という建前がある.ここら辺りはグレーゾーンなのでこれ以上は勘弁.
インストール
インストール自体は特に問題ない.付属のディスクをトレーに入れて起動したインストーラの指示に従うだけだ.
Adobe アカウントへのサインインを求められる.サインインする.
ライセンス認証するか 30 日間の体験版として使用するかを選ぶ.ここでは『このソフトウェアをライセンス認証する』を選択する.
正式にライセンス登録するためにシリアルコードを入力する.シリアルコードはディスクカバーに印字してある.
インストールには 30 分ほどかかるので,他の作業をして時間を潰す.
画像のピクセル数を確認しよう
普段あまり意識することはないが,最近のスマホの解像度には目を見張るものがある.はがき程度の大きさなら問題なく印刷できる.しかし,クラウドサービスに写真を同期している場合には注意が必要だ.特に Google フォトに無制限の枚数でアップロードしている場合には,解像度はかなり低くなる.結果として,はがきに印刷した場合,ジャギーという荒いピクセルの仕上がりにがっかりすることになるだろう.
スマホのカメラから直接写真アプリに保存された原画を PC にダウンロードしよう. iPhone7s で縦位置で撮影した場合は横幅 3024 ピクセルあったが, Google フォトに変換された画像は 667 ピクセルに減っていた.スマホで見る分には問題ないが,印刷する場合,この解像度の低下は致命的になる.
はがきの縦横の比率を確認しよう
スマホの縦横の比率とはがきの縦横の比率は異なる. iPhone7s の場合,縦 4032, 横 3024 であるが,はがきは約 3:2 である.スマホの画像のままだと縦が 500 ピクセルほど不足する計算だ.今回はがき全面に印刷するので,この不足する分を何らかの方法で埋める必要がある.
画像処理の実際
画像を取り込む
フォトショップで 4536 X 3024 ピクセルの新規ファイルを作成し,先程の写真画像ファイルを開く.
背景をレイヤー化する
画面上部の方に『クイック』『ガイド』『エキスパート』とあるが,これはユーザーのレベルに合わせて表示されるメニューを変更するものだ.『エキスパート』を選んでおく.
画面右側にレイヤーが表示されている.最初は開いた画像が背景に張り付いている.これを右クリックして『背景をレイヤーに』変換する.この後画像処理をするために必要な措置だ.
レイヤーマスクを追加する
さらにその画像のレイヤーの上部にコマンドがアイコンの形で表示されている.左から 4 番目,『レイヤーマスクを追加』をクリックする.このレイヤーマスクに対して処理を行う.
レイヤーマスクに透過グラデーションを適用する
単に写真を全面印刷するだけでは芸がない.プロにはかなわないが,ちょっと画像を加工して上品な仕上がりにしたい.そのような場合に俺が多用するのは画像の一部に透過グラデーションを適用することだ.
具体的には画像の上端 10-20 % ほどを上端に向けて透明にしていく.イメージが湧くだろうか?
レイヤーマスクを選択した状態で左のツールバーのグラデーションをクリックする.画面下部にグラデーションツールが表示されるので,『編集…』をクリックする.
グラデーションエディタが開くので,『描画色から背景色に』をクリックする.他のオプションはそのままでよい.
画像の上部 1-2 割のところから上端に向かってドラッグする.
透過グラデーションが適用され,上端に行くにつれて透明になっていく.開始位置と終了位置は適宜調整しよう.
テキストを入力する
左のツールバーでテキストを選択する.新しいレイヤーが自動的に追加されるので,『謹賀新年』『平成31年元旦』『住所』『家族の氏名』などを入力していく.大きさはそれぞれ 72 ポイント, 36 ポイント, 24 ポイントにしたが,適宜調整されたい.
位置合わせはネットプリントサービスで行う
加工したレイヤーを JPEG 出力する
ここまでの作業でレイヤーは数枚に増えているはずだ.ここで『レイヤーを統合』してしまうと,後で位置を変更したくてもできなくなってしまう.決してレイヤーを統合してはいけない.
さて,レイヤーを複数のまま JPEG に保存する.具体的には可視表示のレイヤーが出力される(目のアイコンがレイヤーに表示されているのでクリックして切り替えてみるとよいだろう).『ファイル』メニューから『別名で保存』を選び,ダイアログでファイル形式を『JPEG』にして保存する.この作業は位置を修正するたびに行う.
なお,当然のことながら PhotoShop で作成したファイルは保存しておくこと.
ネットプリントサービスにアップロードする
しまうまプリントにログインし,画面上部中央の『年賀状』をクリックする.
テンプレート集に画面遷移する.
一番下までスクロールする.
目的の『オリジナルデータ入稿』画面に遷移する.ここで縦か横かを選択する.
『印刷仕上げ』か『写真仕上げ』かを選択する.俺は写真仕上げを選んだ.マットなテクスチャで仕上がってきた.つるつるした仕上がりが好みなら印刷仕上げが良いだろう.
この後やっと先程の JPEG 画像をアップロードできるようになる.
レイアウトを確認する
ここで青枠内に表示されている状態が仕上がりだ.上下左右いずれも余白なしで印刷される.ここでバランスがおかしいと思ったら,何度でも PhotoShop で修正しよう.その都度 JPEG 画像をアップロードすることになるが,ここまで出来た人なら大した手間ではないだろう.
宛名を選択する
昨年の宛名を流用できる
俺の場合,昨年もしまうまプリントで作成したため,宛名データベースは昨年のものがそのまま流用できた.最初は csv ファイルにしてアップロードしなければならないのだが.フォントは数種類から選べる.
宛名印刷はきっちりと仕上がり,郵便番号のズレもない.理想的な状態だ.
まとめ
年賀状というか,新年のグリーティングカードにここまでこだわるのは日本人くらいだと思うが,それでもクラウド化の流れは加速しているように思う.
ひと頃はカラーのインクジェットプリンタで裏面も宛名面も自宅で印刷していたものだった.最大の欠点は印刷がずれてしまい,必ず何枚かボツになってしまうことだった.特に 7 桁の郵便番号が枠からはみ出してしまうことが多く,イライラさせられた.
それがいつの間にか,裏面は富士フィルムやキタムラなど写真メーカーのサービスによる印刷が主流となってきた.さらに宛名も印刷してくれるようになった.ユーザーはただ裏面の画像データと宛名のデータベースをアップロードすれば済むようになった.
このまま行けば,将来年賀状はどうなるのだろう?年賀はがきは日本郵便の独占販売だから,年賀状は制度としては残るだろう.しかし,日本人自身がいつまで年賀状を買うのかは分からない.企業などの業務用の需要は残るものの,個人としての需要は着実に減っていくのではないか.
今後も日本郵便は必死に年賀はがきを売ろうとキャンペーンを張るだろう.しかしいつか,「あれ?年賀状って SNS で出せば良くね?ていうか,年賀状出す必要あるの?」とみんなが気付いた時にどうなるか.非効率的な物理メディアの一つの終焉を見ることになるのかも知れない.