キッチンの未来はどうあるべきだろうか.一つの答えとして,私見を述べたい.
家電はネットにつながるべきか? 「未来のキッチン」を制する闘いの内幕
家電業界の IoT 化は遅れていると言っても過言ではない.上記の記事にあるように,
ソフトウエアの DNA が彼らのなかにはない
のである.とにもかくにも WiFi チップを埋め込んでおこうというのは理解できる.しかし,重要な点を見逃している.
そもそも,食事の目的は何だろうか?家族との団欒?空腹を満たす?それもあるかもしれない.だが一言で言えば,バランスの取れた栄養の摂取だ.具体的には,摂取カロリーを理想的な範囲に収め,必要なたんぱく質を確保し,脂質を必要十分なだけ摂取し,残りを炭水化物に割り当てることだ.
しかし現代においても家庭で食事を作る主婦は,理想的な栄養素の割合が確保できているかどうか,知ることができないでいる.なぜか?
材料の計量ができていないことが最大の原因だ.主婦はざっくりと,これだけの材料があれば家族を満腹させられるだろうと経験で知っている.しかし,それが理想的な栄養素の割合であるかを保証するすべはない.もし妻に,すべての料理の材料を計量してから調理しろと言ったら,大抵の場合,キレて手に負えなくなるだろう.それだけ調理には多くの時間と手間を費やしているにも関わらず,大抵の日本人の場合,たんぱく質は不足しており,炭水化物と脂質が多すぎてカロリーオーバーになっている.
ここにチャンスがある気がする.調理の手を煩わせずに,材料の計量を自動で行ってくれる調理器具があれば理想的だ.まな板が第一候補だ.誰がいちいちキッチンスケールで魚や肉の重さを量ってからまな板の上に載せるだろうか?まな板は材料を載せられた時点で計量する.何が載っているかは天井のカメラで識別する.当然,まな板もカメラもキッチン AI と接続されており,AI は何の材料がどれだけの重さであるかを判断する.主婦は次に必要な材料をまたまな板で切る.AI はその都度材料を判断し,重量を測定する.
切った材料は鍋かフライパンに投入される.鍋,フライパンにも計量機能があり,AI と接続されている.鍋やフライパンには材料だけでなく,水や油,調味料も投入される.水は水道の蛇口から直接またはカップを経由して投入される.その際,カップはキッチンの天板に置かれることも置かれないこともある.鍋やフライパンによる直接計量が必要だろう.油は容器から直接または計量スプーン経由で投入される.油の入った計量スプーンはキッチンの天板に置かれることはないだろうから,これも鍋やフライパンによる直接計量が必要だろう.料理に使用する調味料は極微量であり,計量が難しいかもしれない.
AI は鍋やフライパンに投入されたすべての材料から,あらかたの栄養素を算出することができる.食品成分データベースは既に公開されており,誰でも使うことができるから,カメラで撮影した材料の判断とまな板,鍋,フライパンの計量機能を統合する AI さえ開発できればよい.
次に必要なのは食器による計量だ.あらゆる食器に計量機能と通信機能をもたせることが必要になる.各食器にどの料理がどれだけ盛られたか,さらにどれだけ重量が減少したかを判断することが AI に求められる.食器から減少した料理を誰が食べたかの判断も必要だ.これによって個人が摂取した栄養素を算出できることになる.
しかし問題が一つある.電子レンジだ.高周波で加熱する以上,電子機器の保護がどうしても必要だ.これについては技術の進歩を待つしかない.
当然,AI の導入された家庭のレシピはクラウドに接続され,企業なり厚生労働省なりのデータベースに蓄積されることになる.日本人の食事摂取基準といった政府による統計調査もやりやすくなるだろう.ここまでくれば,個人ごとにカスタマイズされた栄養指導も可能になる.場合によっては調理中に追加のレシピを AI が提案することさえ可能となるだろう.
妄想ばかり膨らませてみた.しかし,十分に実現可能だと思う.
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