昨年は英国の論文を取り扱った.今回は住宅断熱という介入が死亡というアウトカムにどのような影響を及ぼすかを調査した論文を紹介する.
ニュージーランドは日本とほぼ同じ温帯区分に属し,南半球にある島国である.住宅の3分の1は全く断熱されていない.日本の住宅は9割が断熱されていないとされる.どの国も貧困層の住宅事情が厳しいことは共通している.ニュージーランドではそれらの住宅に断熱改修を施し,死亡率が減少するかをみた.
Co-evolution of human and technology
日本におけるスマートウェルネス住宅調査のレビュー論文であり,介入試験の総括である.短期的には断熱改修により血圧が低下したことを示している.長期コホートについては今後データを収集する予定だそうであるが,エンドポイントに死亡を設定していないのが悔やまれる.英国の統計では死亡統計も検討しており,まさに全省庁を跨いだ介入プログラムの効果を検証する体制が整っている.日本も見習ってほしい.
前回は屋内温度変化と血圧変動との相関関係を見た.今回は介入試験の結果を示しており,非無作為化比較試験であるためエビデンスレベルとしては低いものの,因果関係に迫る内容である.
Role of housing in blood pressure control: a review of evidence from the Smart Wellness Housing survey in Japan Hypertens Res. 2023 Jan;46(1):9-18. doi: 10.1038/s41440-022-01060-6.から本文は読める.読みやすい英語であり,原文のまま挑戦しても問題ない.
スマートウェルネス住宅調査の結果から一つの論文を紹介する.前回の投稿では血圧値と屋内温度変化との関係を見たが,今回はベースライン調査から住宅の屋内温度と血圧変動との相関関係を見たものである.表題の論文はここから読める.
“室内温度の不安定性が冬季の家庭血圧の日内変動および日間変動に与える影響:日本全国のスマートウェルネス住宅調査から” の続きを読む
表題の原文はCross-Sectional Analysis of the Relationship Between Home Blood Pressure and Indoor Temperature in Winter: A Nationwide Smart Wellness Housing Survey in Japan DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.119.12914で読める.家が寒いと血圧が上がるという経験則をデータで示した論文である.血圧が上がれば心血管疾患リスクが上がり,死亡率も上がる.したがって冬には死者が増える,という冬季超過死亡率の上昇まで見てあればよいのだが,残念ながら死亡はエンドポイントとして見ていない.それがこの研究の限界である.
NHK スペシャル「人体」シリーズ第 2 集「驚きのパワー!“脂肪と筋肉”が命を守る」で紹介されていた論文である.筋肉もまた様々なメッセージ物質を出して体内の臓器と対話している分泌臓器である,という視座を提供した点でこの論文の功績は大きい.2018 年 7 月時点での被引用回数は 1000 を超える.
筋トレはもはやボディビルダーやトレーニーの専売特許ではない.単に肉体を改造するだけでなく,代謝疾患や癌など人間を苦しめる病気を予防する優れた手段であることが,最新の科学研究によって分かってきた.運動が人の生命予後を改善することは疫学的には分かっていたのだが,その分子生物学的な機序がようやく明らかになってきた.今回はこの論文の全訳を紹介する.
この論文の著者はコペンハーゲン大学の Bente Klarlund Pedersen 博士だが,論文引用の順番がきちんと文章通りになっていて非常に読みやすい.普通の論文だと引用の順番がぐちゃぐちゃで大変読みにくいのだが,きちんとした人なんだろうなと思わされる.いや,どうでもいいんだけどね.
Amazon によるスマートキッチンの発表を受け,各誌が一斉に報じたので紹介する.
英語の論文読んでたら止まらなくなって勢いで全訳してしまった.ほんとは全訳なんてしちゃいけないもんだと界隈では言われてたりするんだけど,この際まあいいや.
出典は筋トレが病気による死亡率を減少させる幸福な真実,大学病院理学療法士の方のブログ.いつもお世話になってます.幅広い論文検索能力,素晴らしいです.脱帽.
有料ってところでめげそうになる.PDF なんだけど,あまりレイアウトがきれいじゃない.どうも速報らしくて印刷用じゃないっぽい.
気になったのは考察で述べられている(本記事では強調表示してある)ところの,「若年成人では筋トレが動脈硬化を促進している可能性がある」というくだり.
アナボリックステロイドによるドーピングについては考察されているのかな?アメリカとかだと結構な割合でドーピングが浸透しているらしいし.若い男が手っ取り早くムキムキの体を手に入れたくてステロイドに手を出す,てのはいかにもありそうな話だ.参考文献までは読んでないので知らんけど,誰か読んだら教えて.俺もう疲れちゃったよ・・・
ところどころ翻訳が変な箇所があるけど,翻訳業者じゃないから勘弁してくれ.さて,行きますよ.