STARTUP

 STARTUPを観た.シーズン 1 を観終えたところだ.

 GenCoin という暗号通貨をめぐるドラマだが,暗号通貨で一儲けする話かと期待して観ると肩透かしを食らう.タイトルの通り,事業の核となるソースコードが完成してから会社を興すまでの話だ.主役は 3 人.開発者の女イジー,銀行勤めの白人ニック,ギャングのナンバー 2 ロナルドの黒人.FBI の刑事が敵として現れる.刑事と言っても清廉潔白などではなく,むしろ腐敗にまみれまくっている.それぞれの思惑が複雑に絡み合って物語が進行していくが,暴力ありセックスありでテンポよく進み,観ていて飽きない.

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訣別

 その時は気づかなくても,後になって転機であったことが分かる時がある.2010 年が俺にとってそれだった.

発端

 前年 2009 年に伯母が亡くなった.脳梗塞で寝たきりとなり,施設を転々とするうちに癌が見つかった.全身状態からして根治手術は不可能で,管から栄養を入れるだけの状態だった.祖母も癌で亡くなっており,次は自分だと父親は思ったのかもしれない.

 俺の父親は人格異常者だった.サイコパスと言っていいかもしれない.後で分かったことだが,父親は俺を自分の財布に,妹に自分の介護をさせるつもりだったようだ.いわゆる毒親.子供の人生を支配するために巧妙に立ち回り,逃げ道を塞いで回るタイプというか.その性格ゆえ伯母の嫁ぎ先と折り合いが悪く,伯母が亡くなるまでの間執拗に先方に干渉したために,葬儀の場で先方から絶縁を言い渡されたほどだった.

 俺の家系は祖父の代からキリスト教徒だった.しかし伯母の嫁ぎ先は仏教だった.葬儀は当然仏式となる.それが気に食わず,父親は伯母の法要を自分たちだけで嫁ぎ先と関係なくキリスト教式で行うと言い出した.そこまでなら自己満足として勝手にやっていればいいのだが,その費用を俺に出せと言ってきた.

 当然俺は断る.ここにきて父親との確執が表面化した.

 俺は大学生の頃実家から仕送りを受けていた.卒業して就職し,収入に余裕が出てきたため仕送りの返済を自発的に始めた.今思えば馬鹿なことをしたと思う.父親はその間に仕事を辞め,俺の送金を当てにするようになった.返済が仕送りの総額に達して中止を言い出しても,送金を続けろとの一点張りだった.

 何かおかしい.そう感じ始めていた矢先,伯母が亡くなった.妻と協議して電話で送金中止を告げた瞬間,父親は豹変した.

 送金を続けないなら命の保証はしない.たしかにそう言った.残り 3,500 万円返してもらう,とも言った.

 呆気にとられるとはこのことだ.こいつは何を言っているんだ?ここに来てようやく,俺は父親が異常な人間であることに気がついた.

 翌日,両親が俺のところに乗り込んできた.激しい罵り合いの末ようやく二人が帰った後,怯えて隠れていた娘が泣いた.

 俺の家系では DV が常態化していた.父親も,祖父も,曽祖父も自分の妻を殴っていた.自分の妻だけでなく子の妻も虐待していた.俺は父親が母親を殴っている所を見たことはない.しかし,妹は見ていた.

 祖父は結核のため定職につかず,家系は祖母が支えていた.父親はそんな祖父を心底憎んでいた.にも関わらず,父親は祖父と同じように子供から搾取している.貧困と虐待の連鎖だった.

 このままでは俺も家族も不幸になることは明らかだった.

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親という呪い

https://unsplash.com/

 職場の新人の女の子と会話する機会があった.職場は県内 2 番目の中核都市で,彼女は近隣の市にある自宅から通勤していた.

 「君,いつもすみませんって言うね.俺,何か悪いことしたっけ?」

 「いえ・・・」一瞬混乱して続ける.「すみません」

 「ほら,また謝ったww」

 「あ,ほんとだ.すみません」

 「ほら,またwww」

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東京紀行

 先日東京に出張した.その時のことを記す.

 土曜日午後 6 時.台風接近の前日で小雨が降っていた.用事を終えた俺は品川駅に向かった.切符を買って山手線に乗る.降りたのは浜松町駅.来る時にゴールドジムを見かけており,終わったらここに来ようと決めていた.

 降りたはいいが,土地勘がないと道がさっぱり分からない.駅の構造や降りていく階段が頭に入ってないとどこに出るか分からない.Google Map があるとは言え,片手にカバン,片手に傘ではスマホが見られない.正面の出口から降りればすぐだったものを,何を勘違いしたのか反対側の出口から出てしまい,公園の側に降りてしまった.旧芝離宮恩寵庭園というのだそうだ.公園と線路の間に道がない.結局公園をぐるりと迂回するハメになった.この時点で既に疲れてしまう.職場にいつも持参するカバンなのに,ズシリと重い.

 Google Map ではもう着いているはずなのに,入口が分からない.汐留芝離宮ビルディングの中に入口があるのかと思っていたが,実際は外にあった.

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虎とベンチプレス

https://www.worldwildlife.org/photos/sumatran-tiger

 この物語はフィクションである.真に受けないようにされたい.

 あなたは今から数万年前,ある大陸で生きていた若者だ.数十名の部族の一員だ.あなたには弟がいた.

 ある夏の日の午後,あなたは弟と一緒に狩りに出かけた.あなたの担当は居留地の西だ.他に北,東,南へも手分けして他の男たちが狩りに出かけている.普段はこうして少人数の複数チームで小中型の動物を狩っている.大型の動物を狩ることはめったになく,年に一回あるかないかだ.その際は何日もかけて罠を仕掛け,少数の突撃班と,残り大多数の伏兵班に分かれる.もちろん構成員は全ての男だ.

 突撃班に選ばれるのは大変な名誉だった.巨大な動物はその体重だけで十分に殺傷能力が高い.罠のある方へ追い立てるのが役目だが,間違って自分たちの方向へ突進してきたら文字通り命にかかわる.実際,過去の狩りでは突撃班の半数が死亡したこともある.命を代償として賭ける彼らには高い名誉と報酬が与えられるのだった.

 彼らは戦士と呼ばれ,食料の配分,武器の材料,そして女の優先権が与えられた.実際,優秀な戦士の子もまた優秀な戦士となることが多く,強い男が多くの女に子を産ませるのは部族の繁栄にとって当然だと考えられていた. “虎とベンチプレス” の続きを読む

ハイパーソニック・エフェクト

組み立て中の自作スピーカー

 オーディオに関してはあまり詳しくないが,音楽は聴きたい.そんな人は多いだろう.俺もその一人だ.学生の頃,大枚をはたいてミニコンポを買ったものの,音質の低さに愕然とした.以来コンポは埃をかぶり,いつしか音楽からは遠ざかっていた.

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プライベートジムのススメ

 筋トレを始めて 1 年半になる.週刊金融日記で筋トレの記事が続き,自分の中でモチベーションが徐々に高まっていた.きっかけは 2 年前に妻の実家で飼っていた犬を引き取ったことだった.毎日朝夕の散歩が日課になり,運動の気持ちよさが少しずつ体感できるようになっていた.半年後に転職し,個室が充てがわれたこともあって 5 月頃から室内で自重の腕立て伏せ,スクワット,腹筋をするようになった.

 新しい職場にはなぜかトレーニングマシンが大量にあった.チェストプレス,ローイング,レッグプレス,ヒップアダプション,ヒップアブダクション,レッグカール,レッグレイズ,腹筋.6 月頃からそちらでトレーニングするようになった.最初の負荷はチェストプレス 50 kg, レッグプレス 120 kg からだったと思う.フォームも何もあったものではなく,とにかく 10 回 3 セット挙げることが精一杯だった.

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Interstellar

 Interstellar を観た.一言で言うと,『上質のSF』である.

 滅亡に瀕した地球を救うため,土星軌道に出現したワームホールを抜けて外銀河に旅立つ宇宙飛行士の物語,と書いてしまえばつまらない.先に旅立った 12 名の宇宙飛行士のうち,生存可能性のあるのは 3 名.その 3 名のうち,誰を最初に救出するか.時間と,物資は有限である.クルーの協議にも葛藤がにじみ出ている.

 最初に着陸した星でクルーの 1 名を失う.地球時間での 23 年を費やし,軌道に戻った彼らは次の星に向かう.星間通信の場面で成長した娘の姿に主人公が咽び泣くシーンは印象的だ.

 2 番目の星で冷凍カプセルから蘇生した科学者の裏切りにも強い説得力があり,極限状況に置かれた人がどんな行動に出るか,あらかじめ想定しておかなくてはならないと感じた.2 番目の星でまた 1 名のクルーを失う.裏切った科学者もまた宇宙の藻屑と消える.

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iROBOT

 Amazon Prime で表題の映画を観た.AI 絡みの映画で自分の基準に達したため,ブログで紹介する.

 アイザック・アシモフのロボット三原則に基づき,近未来に何が起こりうるかを叙述したものである.日本語のタイトルはアシモフの『われはロボット』にかけてあるのだろう.

  1. ロボットは人間に危害を加えてはならない.また,その危険を看過することによって,人間に危害を及ぼしてはならない.
  2. ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない.ただし,あたえられた命令が,第一条に反する場合は,この限りでない.
  3. ロボットは,前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり,自己をまもらなければならない.

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巨木のミニチュアを作る

 子供は今夏休みだ.夏休みといえば宿題,工作,図画.工作,図画についてはいつの間にか親がすることになってしまっている.そう,今は子供の工作に取り組んでいる.

 詳細は伏せるが,その工作に関連して初めてミニチュア樹木を製作することになった.この辺りについてはフィギュア制作界隈が詳しいのだろうが,あいにくその方面の知り合いはいない.しかし調べてみると,ジオラマで背景として樹木を製作するノウハウはある程度蓄積しているようだ.今回はそういったノウハウも参考にしつつ,そこそこリアルな樹木のミニチュアを作っていきたい.

 完成イメージとしてはこんな感じだ.昭和記念公園のケヤキの木.トトロの木と言ったほうが分かりやすいかもしれない.

http://www.geocities.jp/akutamako/5-totoro.html

 通常,樹木のミニチュアは細い針金を撚り合わせて幹から枝を出し,枝を切って長さを調え,葉を載せるという形式を取る.しかしそれらに共通する課題として,幹が細すぎるという問題点があるようだ.また枝の形が自然に見えるようになるにはある程度の試行錯誤が必要とも思われた.

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